最近、ワイドショーやニュースを見ていて
「内部留保」という単語が頻繁に出てくることに気がついた。
番組の中でコメンテーターが発言している。
「新型コロナウィルスが蔓延し、
さまざまな方面で経済に影響が出始めている。」
実際にPQの減少はGやキャッシュに多大な影響を与えることは
容易に想像がつく。PQ激減で倒産したというニュースも流れている。
さらにコメントが続く。
「リーマンショックのときよりも影響が大きい。
国の手厚い政策を望みたいところ。」
「大企業のように、
内部留保をたくさん持つ(内部留保がたくさんある)
企業はいいかもしれないが、
体力がない中小小規模企業は大変な事態に追い込まれている。」
・
では、「内部留保」とはいったい何のことなのか。
この単語を使っているコメンテーターや司会者は、
内部留保の意味をきちんと理解しているのだろうか。
「体力がある会社」とは、
具体的にどのような会社を指すのだろうか。
この状況が続く中で「どこまで持ちこたえられるのか」
という意味で使っているとしたら、
「いつまで持ちこたえられるのか」は、
「倒産を迎えるのは何カ月先なのか」ということと同じだ。
では、体力とは何のことなのだろうか?
その前に「資本金」について考えてみたい。
資本金とは決算書に載っている「資本金」のこと。
資本金という単語は、内部留保に比べて世間一般に浸透している。
ここに「資本金1億円の会社」があったとすると、
この1億円は何を意味するのか。
会社を設立した際に株主や出資者から集めたおカネの合計、
「元手(もとで)」。
パチンコや競馬をする際の「軍資金」と同じ意味だ。
会社が資本金をもとに利益を増やすという行為は、
パチンコや競馬と同じように
軍資金(元手)をいくら増やすかということ。
増えた差額のことを会計では「利益」と呼ぶ。
決算書の自己資本(純資産)の部には、これらの情報が載っている。
・
資本金1億円の会社があったとして、
「この1億円」は、会社設立時に集めた現金合計の「覚書、メモ」。
設立直後は、たしかに銀行口座には現金1億円が存在する。
しかし、次の瞬間から、支払いが始まった段階から、
現金1億円は減り始める。
ところが決算書に載っている資本金の1億円は、
増資や減資をしないかぎり永遠に1億円のまま。
利益を含む自己資本(純資産)はたんなる差額で実体はない。
けっして現金のことではないのだ。
ここから少しの間、利益の話。
「利益は実体がない」とはどういうことなのだろうか。
数の計算、100から60を引けば答えは40。
この40という数字は引き算の結果で
具体的な「もの」は存在しない。
では、たとえば「りんご」。
100個のりんごから60個を引いた
残り40個のりんごは具体的にイメージすることができる。
売上が100円で費用が60円だった場合の利益は40円だが、
この40はたんなる差額で「もの」は存在しない。
ところが多くの人は「利益=現金」だと思ってしまう。
なぜ「利益=現金」と思ってしまうのか、というと、
会計には「円」という単位がついているからだ。
数字に「単位」がついていると、
勝手に「円=現金」とイメージしてしまうのだ。
だから会計の知識がない人たち(たとえば社員など)は、
当期の利益が「1億円出た」となれば、
現金が1憶円増えたと考えるのは自然だと思う。
多くのコメンテータの発言を聞いていると、
「内部留保=現金」
という意味で使っている(ように私には伝わってくる)。
「内部留保」とは、
会社設立後これまでの利益(=差額)を累積したもの。
当然、内部留保も実体がない。(実体のない利益を累積しても実体はない)
決算書の「純資産の部」に載っている資本金をはじめ
利益準備金や別途積立金、繰越利益剰余金などは、
勘定科目として名前がついているだけで、その実体は「何もない」。
決算書や会計が苦手な社長でも
MGを3回やればこの感覚はつかめるはず。
内部留保とは「累積G」のことだとわかってくる。
決算書における累積G(=内部留保)は、
純資産合計から資本金の額を差し引いた「差額」のこと。
純資産合計が1億2千万円、資本金が1億円の会社の内部留保は、
2千万円(純資産合計1億2千万円-資本金1億円)。
純資産合計が8千万円、資本金が1億円の会社の内部留保は、
▲2千万円(純資産合計8千万円-資本金1億円)、
この差額が「▲1億円」を超えれば
その会社は自己資本割れ、債務超過の状態だ。
では「企業の体力とは何か?」
何をもって体力のある会社かどうかを判定するのか、
考えてみてほしい。
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