Vol.557 会計情報から未来を見る(その2)


『研究者を目指すのであれば、

 いま、世の中から認められようと思わないことだ』

 

ある科学者が自身のブログで述べている言葉です。

数学者だった父から言われたのは、

 

『生きているうちは評価されちゃダメだぞ。

 生きているうちは叩かれていいんだ。

 死んでから30年経って評価されたら立派な学者だ。』

 

彼の生涯の“信念”になったそうです。

 

                ・

 

本来会計は、儲けるためのツールではありません。

経営の結果を集計して報告(説明)するためのものです。

投資家や銀行は、この報告書を利用(活用)します。

税務申告の際は、この報告書をもとに税金を計算します。

 

それがいつの頃からか、

会計人や中小企業診断士、そして世の中が「決算書」を重要視しはじめました。

 

たしかに、会計は儲けるためのツールではありませんが、

会計で集計されたデータ(情報ではない)には、

この先経営に使える部分が含まれています。

決算書に載っているのは、これらのデータの一部分にすぎません。

 

「今年の売上をどうするか?」を考えてみるとわかりやすい。

「昨年の売上は10億円だった」というのは「会計の話」です。

この結果をもとに今年(あるいは来年)の売上を考えるのは「経営」です。

 

2期比較のP/Lには、

前期と当期の売上が載っていますが、

ここからわかるのは前期と当期の「売上総額」です。

これ以上の情報は、決算書に記載する必要ありません。

 

売上の結果だけを集計するなら会計は不要ですが、

これを会計で集計する、というところに価値があります。

 

さらに未来に向けて活用するとなると

意識してデータを蓄積しなけれななりません。

データを情報として使うためには工夫が必要です。

 

                ・

 

「売上を10億円から12億円にする(しよう)」

 

という場合、

 

「売上が12億円だから原価(または変動費)はこうなって、

 経費(または固定費)はこのくらいで、差し引き利益はこうなる」

 

経営を会計で捉える癖がついている人たちは、このように考えます。

そして頭の中にP/Lや変動損益計算書をイメージします。

 

では、社長たちはどう考えるでしょうか?

 

「売上が12億円にする」という理由や思いはさまざまですが、

思い浮かべるのは取引先、仕入先・外注先、そして社員など“経営の現場”です。

 

「受注が増えてきているので売上2億円の増加は見込める」

 

という状況で

それに伴う材料の調達、人手の確保、外注先の手配、

生産能力は今の設備で足りるのか、あらたに投資が必要なのか、

そして取引先との価格交渉をどうするか、カネは足りるのか。

その道のプロである社長だから、頭の中はフル回転です。

 

このような背景があって、

それを計画(数字)にどのように落とし込むのかを考えるのですが、

会計の枠組みを使わないと計算ができません。

そのため会計の話になってしまうのです。

 

社長が身につけるべき会計は、

社長自身が考えている未来を数字で整理するスキル(技芸)です。

決算書の構造を学ぶのも、このためだと思っています。

 

そこで重要になってくるのが、

過去の会計データの中で【どの部分を使うのか】です。

 

(つづく)

 

『社長のための決算書・会計講座』

 

◆資産負債表と貸借対照表

 

あらたに追加しました。

https://www.mxpro.jp/ac-course/

 

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