Vol.555 続)わかりやすい決算書本/やさしい決算書本


前回の続きです。

 

今年9月に東京で開催したMG研修の参加者から聞かれた。

 

「ウノさんは日々企業で発生した取引が、

 B/S・P/L・C/Sのどの部分に影響するのか(どこが増えてどこが減るのか)、

 瞬時にわかるんですよね」

 

「なるほど、私の中ではあたりまえのこの感覚は、

 会計に詳しくないひとたちとっては、あたりまえではない」

 

この質問で、気づかされた。

 

もし、この感覚を身につけることができたら、

会計情報(決算書ではなく)を経営に活用する第1歩になるはず。

社長が未来を考えるうえで、役に立つに違いない。

 


では“この感覚”は特殊なものなのだろうか?

これは“感覚”ではない。誰にでも身につけることができる“技術”。

 

商業高校の生徒たちは“簿記”を習う。

経理を担当している人たちは“簿記”を使って仕事をする。

ここにヒントが隠されている。

 

前回のメルマガで紹介したように、

決算書を作るためには“データ”が必要になる。

そのデータは、経理の人たちが作る。

 

彼ら(彼女ら)は、企業で日々発生した取引を

データとして記録し蓄積するために“仕訳”という技術を学ぶ。

 

仕訳ができるようになるためには、訓練が必要だ。

頭で、知識だけで仕訳ができるようにはならない。

小学生が最初に覚える“九九”の訓練のようなもの。

 

経理を担当している人たちは、

取引から仕訳を、いとも簡単に作成できるスキルを身につけた。

仕訳というデータが何を意味しているのか、当然わかる。

 


なぜ、何年ものあいだ“決算書本”が売れ続けているのか?

出版社の思惑もあるのだろうが、

決算書本を何冊読んでも、会計を理解することはできない。

 

それを知ってか知らずか、あるいは戦略なのか、

税理士やコンサルタントたちも、

でき上った決算書に焦点をおいて解説や分析をはじめてしまう。

 

決算書は、会計の専門知識がなくてもある程度わかるように作られている。

簿記(仕訳)の知識はまったく不要だと言ってもいい。

だから「わかりやすい決算書本」には、簿記(仕訳)の話は出てこない。

 

B/Sは期末の勘定科目の“残高”を、

会計のルールに従って左右に並べた表にすぎない。

現金はいくら残っていたのか、借入金の期末の残高はいくらあったのか。

 

P/Lはもっとわかりやすい。

一番上の“売上高”から順に経費(費用)を差し引いていき、

(途中プラスマイナスが交互に出てくる場面があるが)

最後は“当期純利益”で終わっている。

 


2024年7月、大阪で「決算書特別講座」を開催した。

決算書を理解したいという社長たちが集まったが、

それぞれ「理解したい内容」が異なる。

 

そこで「ある実験」を試みた。

簿記の仕組みを、まったく別の話にたとえた問題を出してみた。

 

会計の専門知識がないにもかかわらず、

この問題に参加者全員が正解、これには私が驚いた。

 

「これから簿記会計の仕組みの話をします」

 

借方とは・・・

貸方とは・・・

複式簿記とは・・・

貸借対照表とは・・・

 

この段階で、

私だったら間違いなく「拒否または拒絶」する。

 

商業高校の生徒たちは、

なぜ簿記という技術を身につけることができるのか?

ここに大きなヒントがある。

次回のメルマガで紹介したい。

 


どうすれば社長たちは、

自分の会社の未来が見えるようになるのだろか?

 

このテーマのもとで

 

『社長のための決算書・会計講座』

 

をホームページで連載します。

「わかりやすい、やさしい」内容では、身につきません。

かといって、難しかったら読む気にはならない。

 

決算書という一部分ではなく、全体の流れの中で会計を学んでほしい。

そのための土台、基礎は必要です。

 

順次公開していきます。

初回は「決算書の正体」です。

https://www.mxpro.jp/ac-course/

 

(つづく)

 

 

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【発行元】株式会社アイティーエス 
【発行責任者】宇野 寛
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