第5章・社長のための戦略MQ会計

4 損益分岐点比率と経営安全率の欠陥

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◆経営を会計の延長で考えていませんか

 缶ジュースの例に置き換えていますが、管理会計(CVP分析)では「売上高」や「変動費」という項目単位で考えます。ですから、缶ジュースであろうと会社全体であろうと計算過程は同じです。

 この方法では、たしかに変動費は売上高に比例しています。というより、比例させているのです。

 ところが、日ごろから会計業務に携わっている人と、販売や営業、製造の現場で仕事をしている人とでは、売上や仕入の「納品額」に対する感覚が大きく異なります。

 

 たとえば商品仕入れ、商品を発注する際は「数量」で行います。仕入金額では発注しません。そのかわり単価を先に決めなければなりません。単価は取引をする際の重要な要素の1つです。単価が決まらなかったら仕入総額が決まらないし、支払い時には資金繰りに影響します。

 営業や製造の現場で働く人たちは、ふだんから「数量」を意識しています。どれだけの量を売ってもらえるのか(商品仕入)、あるいは買ってもらえるのか(売上)。仕入れた商品は倉庫に入りきるのか、店頭に並べきれるのか。

 仕入れた原材料は倉庫に置けるのか、作業スペースが確保できるのか、いつまでに何個納品しなければならないのか、そして納期に間に合うのか。

 ところが会計になったとたん、数量は消えてしまいます。それは、会計とは「金額について行うもの」と決まっているからです。「会計の3つの公準」の3番目、「貨幣評価の公準」です。「会計はおカネ(金額)で計算してください」という決まりごとです。

 

 変動費はほんとうに売上高に比例するのか?

もちろん、答えは[No]です。売上高は「販売単価」と「販売数量」の組み合わせです。仕入れた缶ジュースは「販売数量」に比例するのであって「販売単価」には比例しません。

 販売単価のみを上げる「値上げ」では売上高は増加しますが、仕入金額と数量は変わりません。ところが変動費は売上高に比例して“増えてしまう”のです。

 

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