製品の原価計算には2通りの計算方法があります。1つは、製造業や建設業が行っている「材料費に手間賃(労務費)に経費を加えたものを原価とする従来の方法」です。これを「FC全部原価」といいます。英語で「フルコスティング」。税務署に提出する決算書はこの方法によらなければなりません。
もう1つは、労務費や経費を除いた「DC直接原価」。1936年のハリス(J.N.Harris)の論文「我々は先月いくらもうけたか」は、歴史上最初に直接原価計算に言及したもので、今日の「直接原価計算」という名称は、彼自身が呼んでいた「ダイレクトコストプラン」に由来しています。(参考文献:直接原価計算発達史・高橋賢=著 中央経済社)
最初に原価計算の話をしたのにはわけがあります。MQ会計は「DC直接原価」が大前提だからです。
MQ会計の前身である「戦略会計STRAC(ストラック)」は、西順一郎氏がソニー在籍中に1971年から1981年にかけて開発したものです。戦略(ストラテジイ)と会計(アカウンティング)をかけ合わせた造語で、命名者は西順一郎氏です。1976年にマネジメントゲーム(別名MQ戦略ゲーム)に組み込まれて世に出ることになります。
世の中往々にして損益計算書の数字をMQ会計表に記入しているものを見かけますが、これはMQ会計表ではありません。売上・原価・粗利・固定費・利益を単にローマ字化しただけのものです。
MQ会計は「要素法」です。P・V・Q・Fが自在に動いてG(利益)最大化を目指します。そして「DC直接原価」が前提です。FC全部原価で作成された製造業や建設業の決算書からはMQ会計表は作れません。