第1章・決算書の正体

4 売上原価

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◆実地棚卸のはなし(その2)

 先ほどの問題です。

 Aさんはコンビニの店員です。今月は会社の決算、店内とバックヤードの商品の棚卸(たなおろし)を任されました。

社長から次のように言われました。

「もし、決算で利益が出たら"臨時ボーナス"を支給します」

「だからきちんと数えてください」

「えっ、臨時ボーナスがもらえるんだ。がんばって棚卸をしよう!」

 

 棚卸が終わったあとに休憩をしていると、倉庫の片隅にまだ数えていない商品があることに気づきました。ざっと見ただけで500個はありそうです。

「ちょっと待てよ、、、」

「利益が出ればいい思いができる」

臨時の収入はとても魅力的です。よこしまな考えが一瞬Aさんの頭をよぎります。

この500個は追加したほうがいいのか、

それとも、このまま追加しないほうがいいのか、、、

 あなたがAさんだったら臨時ボーナスをもらうためにどちらを選ぶでしょうか?

1.この500個を追加して報告する

2.追加しないでこのまま報告する

そもそも、なぜ決算で棚卸をしなければならないのか。

理由は、

売上原価を確定させるため(会計では棚卸をしないと売上原価がわからない)

利益を確定させるため

です。

 最終利益は税金計算のもとになります。ですから棚卸の金額は税額に影響を及ぼします。棚卸では、先に在庫の「数量」を数えます。

 ほんとうは100個あったものを120個にすると利益は20個の金額分増加します。これを故意に行うと「粉飾決算」。

 100個あったものを80個だったことにすると20個の金額分、利益は減少します。故意に行った場合は「脱税」です。

ないものをあるように見せかける=粉飾

実際にあるものを隠す=脱税

 Aさんは、「1.この500個を追加して報告する」を選択すれば会社の利益は増えて臨時ボーナスを手にすることができます。ただし、意図的に行った場合には、問題ですね。

 

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