第1章・決算書の正体
私が会計事務所に勤めはじめて間もないころ、ある企業の社長さんから質問されました。
「ここ(P/L)の売上原価欄に書いてある金額はどうやって計算するのですか?」
この問いには答えられませんでした。売上原価を求める公式を覚えなければ売上原価の説明ができないのです。これが会計だ!と思った瞬間でした。
売上原価=期首在庫+当期仕入(当期製造)-期末在庫
この公式の意味するところは、
「会計では実際に売れた分の原価がわかりません。そこで先に売れ残った商品を調べます。期首にあった商品に当期で仕入れた商品を足して売れ残った商品を差し引けば、当期に売れた商品の原価がわかるはずです。」
と言っているのです。
製造業では、「先に売れ残った製品を調べます。期首にあった製品に当期に製造した製品を足して売れ残った製品を差し引けば、当期に売れた製品の原価がわかるはずです。」
このようになります。
金額ではなく個数にすると、よりわかりやすくなります。
ということを言っているわけです。
売上原価というのは本来、売上と同時に確定します。仕入れただけでは売上原価にはなりません。会計における棚卸は、
仕入としていったん損益計算書に“登場”した金額から、まだ売れていない金額を合計して、貸借対照表の棚卸資産へ“引っ越す”ための一連の処理
と言うことができます。
「一連の処理」についてはこのようにしましょう!
これが会計で決められたルールです。税理士から言われて行う期末の棚卸作業は経営のため(儲けるため)ではなく、決算書を作るための年1回の儀式なのです。手元にあるものをいちいち数えてからでないと原価がわからないようではとても経営はできません。
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