第1章・決算書の正体
ここから原価の話です。
「うちの製品(あるいは商品)は全般的に原価率が高い」
「だから原価率を一律3%下げることが今期の目標!」
社長が全体会議で社員に伝えたとします。社長は「原価率や粗利率ということば(単語)の意味は、営業も製造も所属部署に関係なく知っているはずだ」と思って発言しています。
「利益」も同じです。売上さえ増えれば利益(おカネ)は増えると思っている営業マンは、売上を増やすにはどうするか?を考えます。製造は、いま作っている製品の原価を思い浮かべるかもしれません。原価計算を学んだ人は、計算で求める原価が正しい原価だと思っている人もいるはずです。
いま各部署で使っている「原価率」の意味(定義)を正確に知らない人は、具体的にどのような行動を起こせば原価率が下がるのかをイメージすることはできません。大事なのは「使っていることばの定義や意味を明確にすること」です。〇〇率のように率がつくことばは分数です。分子と分母をわかったうえでその意味を理解しなければなりません。
会計には同じ原価でも「仕入原価」と「売上原価」があります。「仕入原価」は文字どおり仕入れた値段(仕入価格)です。仕入れる際にかかった運賃や諸掛りも含めます。
では「売上原価」とは何でしょうか。インターネットで検索するとフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』には次のように書かれています。
売上原価(うりあげげんか)とは企業会計で用いられる費用区分の1つ。財やサービスを生み出すために直接必要とした経費の総称である。損益計算書の費用の部に計上される科目群の総称である。一般に売上高に連動して費用がかかる変動費である。
(中略)
売上高からこの売上原価を控除した額は売上総利益(粗利益)として定義され、企業の営業活動においてどのくらい利益をあげられるかを概算する際によく用いられる。
そして売上原価を求める計算式が載っています。
当期製造原価=期首仕掛品棚卸高+当期総製造費用-期末仕掛品棚卸高
当期売上原価=期首製品棚卸高+当期製造原価-期末製品棚卸高
これを読むと「売上原価」は「会計用語」だということがわかります。製造業の売上原価を求める計算式の解説には「期首製品棚卸高に当期製造原価を加え、期末製品棚卸高を差し引く」と書いてあります。販売業では製造に関する部分はないので「期首商品棚卸高に当期仕入高を加え、期末商品棚卸高を差し引く」となります。この計算式が「会計における売上原価の定義」です。しかしこの説明は、会計を学んだことがない人にとって意味がわかりません。
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