3 決算書の正体

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◆純資産(自己資本)と利益

 貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/S)を図形で表したものです。

 「利益」は会計用語です。収益から費用を引いた差額のことです。「収益」や「費用」も会計で使われる用語です。

 100-80=20の20は差額で具体的な「もの」は存在しません。これがリンゴになると100個-80個=20個となって実体を伴います。会計では「円」という単位がつくとおカネになります。ところが困ったことに、利益に円がついても実体がありません。「差額」のままなのです。

 「利益って何ですか?」と聞くと、社員の人たちは「もうけ、おカネ、使える資金」のように、さも実体があると思っています。利益は「差額」にすぎません。これも会計がわかりにくい原因のひとつです。

 毎年の利益(赤字を含む)は、純資産の「繰越利益剰余金」という勘定科目に蓄積されていきます。累積された赤字は利益を出さないかぎり解消されません。

 B/Sの右下、純資産(自己資本)には資本金が記載されています。会社設立時の元手です。この資本金も実体がありません。会社設立時には一瞬だけキャッシュが存在しますが、そのあとは現金が増えても減っても資本金の金額は変わりません。資本金はメモ、「この金額で会社を作りました」という覚書です。この金額に対して実体のない利益が累積されていくのです。

 

◆内部留保

 コロナ禍の最中、ニュース等で「内部留保」という用語が頻繁に使われました。内部留保とはいったい何なのでしょうか。

 内部留保は、“実体のない純資産合計”から“実体のない資本金の額”を差し引いた「実体のない差額」のことです。内部に貯えたキャッシュではありません。

 純資産合計が1億2千万円、資本金が1億円の会社の内部留保は2千万円(純資産合計1億2千万円-資本金1億円)です。純資産合計が8千万円、資本金が1億円の会社の内部留保は▲2千万円(純資産合計8千万円-資本金1億円)、この差額が「▲1億円」を超えればその会社は自己資本割れ、債務超過の状態です。

 B/Sの純資産の部に載っている「利益準備金」や「別途積立金」も実体がありません。純資産そのものは実体がないのです。

 なぜ実体のない差額である純資産(自己資本)に「円」がついているのか。

 もし、会社を廃業したときに、資産の部に載っているすべての勘定科目の残高を現金に換えることができたなら、そしてその金で負債の部に載っている勘定科目の残高を支払ったとしたらという前提で、その結果最後に現金として残るのが純資産(自己資本)の金額である

です。債務超過の会社は結果、「借入金」が残ってしまいます。

 


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