会計事務所ほど思考力、企画力、創造力が問われない業種も珍しい。
商品を仕入れて売るわけでもなく、在庫を抱えるわけでもなく、
チラシやDMさえ出せば集客できると思っている税理士が山ほどいる。
税理士試験に合格するためだけに日々労力を費やしてきた結果かもしれない。
大学卒業後、いきなり会計事務所に入ったケースなど、
社長たちから見れば最悪である。
世の中を知らずに税理士になって先生と呼ばれるのだから、
よほど自覚のある、自分を客観的に見られる人間でないかぎり、
社長たちと経営の会話はできない。
多くの社長たちは、いま依頼している税理士しか知らない。
他の税理士、複数の税理士と比較ができない。
だから今の税理士に不満を持っていても、そう簡単には替える勇気はない。
税理士が関与している製造業の多くは社員数が少ない小規模の“町工場”である。
その社長方に、決算書をもとに解説をはじめる。それも専門用語を使って。
日々の売上、借入の返済、手形決済、資金繰りに追われている社長も
少なからず存在する。
その社長方を“どうにかしてあげたい“と思う税理士も多いはず。
決算書の分析や解説、そして日々の仕事そのものに疑問を持つ税理士も
現れはじめた。
では、どうすれば町工場は良くなるのだろうか。
根本の問題は、決算書ではない。
決算書に表れる以前に現場で起こっていることなのだ。
現場に目を向けないかぎり、社長と本音で話すことなどできない。
私が幸運だったのは、これまで10年以上にわたって
数多くの税理士と出会ってきたことだ。
そしてそれぞれの考え方を持った税理士がいるのもわかった。
そこで感じたことは、事務所を構えている税理士の多くは、
町工場の社長と一緒だということ。
町工場の社長は、自分が現場に入り、あるときは職人、あるときは管理者、
あるときは営業マン、そしてあるときはクレーム対応や銀行交渉。
会社の経営をじっくりと考える時間がない、余裕がない。
ここに大きな問題が潜んでいる。
ではあなたの事務所はどうなのか。
所長税理士が税務申告を行い、確定申告の最終チェックを行い、
現場作業員として作業に携わる。
そんな税理士が町工場の社長たちに、
どこかのセミナーで聞いてきたうわっつらの話をしたところで、
社長方の心には響かない。
町工場の社長方とじっくり話すためには、
所長税理士であるあなた自身が、覚悟をもった経営をしなければならない。
所員の問題、教育の問題、売上の問題、業務の改善をどうするか、
税理士事務所が町工場そのものなのだ。
私が会計事務所に勤め始めたころは、まだ手書きで帳簿をつけていた時代だ。
それに比べれば、いまはコンピューターで税務申告書が作れる。
作業効率、生産効率は格段に良くなっているにもかかわらず、
税理士の質は向上しない。
コンピューターで仕事をすることに慣れてしまい、工夫をせず、集中力に欠け、
仕事ができないスキルの低い所員が増えている。
これらはすべて所長税理士の責任である。そしてそれが顧問先へも影響する。
会計事務所の体質改善、意識改革が急務である。
税理士自身の理念や方向性が明確になったとき、
はじめて社長たちと本音で「経営の話」ができるようになるのである。
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